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アイスホッケーのパワープレーとは?基礎ルールも解説

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アイスホッケー観戦時に「パワープレー」という単語を見聞きした方も少なくないのではないでしょうか。パワープレーは、アイスホッケーの試合において得点に結びつく可能性を秘めた重要な局面を作り出し、試合の流れを左右する大きなポイントです。では、パワープレーとはどのようなルールなのでしょうか。どういった状況で起こりうるのでしょうか。ここからはアイスホッケーのパワープレーの概要と、基礎的なルールをお教えします。

アイスホッケーのパワープレーを行うプレーヤーの画像

アイスホッケーのパワープレーとは?

アイスホッケーの試合中に「パワープレー」という単語を見聞きしたことがある方も少なくないと思います。アイスホッケーにおいて得点に結びつく可能性の高いパワープレールールとはどのようなものなのでしょうか。今回はアイスホッケーのパワープレーについて、言葉の意味からパワープレーによって試合がどのようになるのかをお教えします。試合観戦前にきちんと理解しておきましょう。

パワープレーの意味

パワープレーとは2チームにて対戦するスポーツにおいて、一方のチームのプレーヤー数が多い状態のことです。これは、サッカーでも戦術のひとつとして行なわれ、前線の攻撃するプレーヤーであるFWの人数を増やすことを意味します。サッカーでは、攻撃に参加するFWプレーヤーを増やす戦術として、試合の終盤時点で負けているチームが行うことが多くなっています。

アイスホッケーのパワープレーとは

サッカーにおけるパワープレーが、DF等のプレーヤーをFWなどの前線に配置して攻撃に参加するプレーヤーを増やすのに対して、アイスホッケーではペナルティによってどちらか一方のチームのプレーヤーの人数が減ることでパワープレーの状況が生まれます。

パワープレーによって何が変わる?

アイスホッケーは体当たりが可能なスポーツですが、ペナルティとして反則行為に対しては罰則が課せられます。この罰則は指定された時間、反則行為をした選手が試合に出場することができなくなります。それに伴って、反則行為をしたプレーヤーの所属チームは規定時間中ペナルティを課された選手の人数分少ない状態で戦わなければなりません。(*1)例えば、試合中に同時に2人が反則行為を行った場合には本来5人であるプレーヤーの人数が3人となった状態で、罰則に応じた時間戦わなければなりません。

出場選手の人数が変わることでパワープレーを行うチームは人数的有利な状況が生まれ、ペナルティによる退場時間内の得点が生まれやすくなります。アイスホッケーでは1得点に付き1点として換算され、ゴール自体のサイズやゴールキーパーのサイズを考慮してもロースコアのゲームが非常に多いため、パワープレーによる得点によって試合が決まることも少なくありません。

(*1:代替選手が代わりにペナルティを消化することができない場合です。)

キルプレーとは

ペナルティによって相手チームの人数が減ることでパワープレーとなりますが、反対に反則によって人数が少なくなったチームのことをキルプレーと言います。例えば、Aチームが反則行為によって1人退場となった場合、相手側のBチームはパワープレーを、Aチームはキルプレーを行うことになります。

パワープレーに対して、キルプレーを行うチームは退場時間内にとにかく得点を奪われないことを目的にプレーを行います。基本的にキルプレーを行うチームはディフェンスゾーンにて4人でゴールを守る特殊な守り方を行います。そして、キルプレーとなっているチームに対してはアイシングが適用されなくなるため、キルプレーを行っているチームがパックをキープした際にはアタッキングゾーンへパックを放り込むことでキルプレーの時間を消費して戦うことになります。

キルプレーのチームは、数的不利の状況で味方プレーヤーの退場時間内を無失点で守り切ることで、その後の試合の流れを掴む可能性があります。しかし、基本的にはキルプレーとなると試合において不利になること点が多いため、アイスホッケーにおいては反則行為をしないことが勝利の近道と言えるでしょう。

アイスホッケーの基礎ルール

ここまで、アイスホッケーのパワープレーについて解説しましたが、他にどのようなルールがあるのでしょうか。以下より基本的なアイスホッケーのルールを公式国際競技規則であるルールブックに則って解説します。

プレー人数

アイスホッケーでは、プレーヤー5人、ゴールキーパー1人でプレーすることになります。上述のようにペナルティによって人数が変化することもありますが、基本的には両チームとも6人でスケートリンク上でプレーします。

5人のプレーヤーは3人のFWと2人のDFを基本として構成されますが、パワープレーの際に得点を取るためにFWの人数を増やすケースがあります。こういった場合には、フェイスオフの時点ではFW3人・DF2人の位置で試合が再開しますが、プレー中にのプレーヤーそれぞれの動きが異なってきます。

さらに、アイスホッケーでは試合中のいつでも、レフェリーのホイッスルが鳴っていなくても自由に選手交代をすることができます。ちなみに、選手交代要員としてスケートリンクサイドの各チームのベンチには最大で20名まで登録することが可能で、20名のなかであれば誰とでも交代ができます。自由な選手交代によって30〜40秒ごとにフレッシュな選手が氷上に現れる点も、他のスポーツに比べて試合展開・スピードが早い理由です。

時間

アイスホッケーの試合時間は20分のピリオドを3回行い、全体で60分間です。この20分間はレフェリーのホイッスルによって試合が中断され、中断の度に試合時間を測る時計が止められるため、実際の時間と試合時間は異なります。また、20分のピリオドの間には15分の休憩が入ります。60分間のレギュレーションタイムが経過した時点で同点となっている場合には、延長戦として5分、10分、20分のいずれかの時間にてサドンデス(*1)方式にて行なわれます。

ゲームウィニング・ショット(GWS)とは、氷上でゴールキーパーとプレーヤーのみとなり1対1で、プレーヤーはゴールを奪うために、ゴールキーパーは得点させないために、対戦することで試合の勝敗を確定させるルールです。サッカーにおけるペナルティキック(PK)と同様のもののことで、1チーム当たり3本のシュートを両チーム交互で打つことで総ゴール数によって勝敗が決まります。基本的にはレギュレーションタイムのあとに延長線が行なわれ、それでも勝敗が決まらなかった場合にゲームウィニング・ショットが行なわれますが、大会ごとの規定によって延長線がなくレギュレーションタイムにて勝敗が確定しなかった場合にいきなりゲームウィニング・ショットが行なわれることもあります。

延長線やこういったゲームウィニング・ショットによって60分のレギュレーションタイムに加えて試合時間が前後することになります。

(*1:どちらか一方のチームが得点した時点で試合終了となります。)

オフサイド

オフサイドとは、プレー禁止区域を定めたルールのことです。アイスホッケーでは、スケートリンクの青色のライン(ブルーライン)を基準にして、相手陣地サイド(アタッキングゾーン)にパックよりも先に入ったプレーヤーがパックを持ってプレーするとオフサイドとなります。

オフサイドが取られると、レフェリーによって試合が中断され、フェイスオフスポット(*1)から試合が再開されることになります。アタッキングゾーン(*2)に突入する、これから攻撃を行う際に取られるペナルティで、試合が中断されるため、攻撃側にとっては良い流れが遮断されることになり、その後の試合の流れを左右する可能性があります。

オフサイドは、パックよりも先にアタッキングゾーンに入ることができないルールのため、パックがオフサイドラインであるブルーラインを超えた時点でアタッキングゾーン内に入ることが可能となります。そのため、プレーの流れによってはブルーラインギリギリで攻撃側プレーヤーが待機していることがあります。また、静止して待機せずにスネーキング(*3)といったスケーティング方法でスピードを落とさずにブルーライン上を走る方法をとることで、パックがアタッキングゾーン内に入ってからすぐに動くことができます。スピードの早いアイスホッケーでは試合の中で予測して動くことが必須となっており、ディフェンディングゾーン(*3)にて味方がパックをキープした時点でFWが攻撃のためにブルーライン付近の前線まで一気に走り出すことが多く、こういった状況が逐一生じます。

(*1:スケートリンク上に描かれた円の中心からフェイスオフを行うところです。)
(*2:ブルーラインよりも敵陣側をアタッキングゾーンと言います。)
(*3:通常のスケーティングと異なり、両足を氷上につけたまま滑る方法です。)
(*4:ブルーラインよりも自陣側をディフェンディングゾーンと言います。)

アイシング

アイシングとは、「アイシング・ザ・パック/ハイブリッド・アイシング」の略称で、大きくクリアすることを禁止するルールです。アイシングが取られるとオフサイド同様に試合が中断され、フェイスオフによって試合が再開されます。

スケートリンクの中心に引かれた赤いセンターラインよりもディフェンディングゾーン側からアタッキングゾーン側にパックを放った際に、誰にも触られずにアタッキングゾーンのゴールラインを超えた場合にアイシングとなります。アイシングの直後は、パックを放ったチームのディフェンディングゾーンでフェイスオフとなります。

ただし、放られたパックに先に触れたのがアタッキングプレーヤーであった場合にはアイシングとは判断されません。さらに、パックに対してディフェンディングプレーヤーとアタッキング側プレーヤーが奪い合いを行っている場合には、アイシングが取り消されることが多く、従来のアイシングラインを超えた時点でアイシングとなるルールに比べてより攻撃的な試合が展開されることになりました。

ペナルティの種類

反則行為はレフェリーによって試合中や延長戦、ペナルティショット時だけでなく、更衣室と氷上への移動時間にコールされる可能性があり、反則行為と判断された場合にはペナルティが課されます。パワープレーが生じることで得点の確率が上がるだけでなく、ペナルティの重さによってはゴールキーパーと1対1となるペナルティショットを行う可能性も潜んでいます。

このような試合の流れを大きく変えることができるペナルティにはどのようなものがあるのでしょうか。ここからはペナルティの種類について、退場時間と代替選手の可否を簡単に3種類分けてお教えします。

マイナーペナルティ

  • 退場時間:2分間
  • 代替選手:不可能
  • アイスホッケーのペナルティのなかで最も軽い罰則です。ペナルティを課されたプレーヤー自身がペナルティボックスに入って遂行する必要があります。アイスホッケーの試合において最も遭遇する頻度の高いペナルティの種類です。

    ミスコンダクトペナルティ

  • 退場時間:10分間
  • 代替選手:可能
  • マイナーペナルティよりも重い反則行為をした場合に10分間に渡る退場処分を課されるペナルティです。基本的にはペナルティを課されたプレーヤー自身が遂行することになりますが、ペナルティを課されたプレーヤーが怪我をしていた場合には、ベンチ内のプレーヤーが代わりに遂行することが認められます。1試合に2回このミスコンダクトペナルティが科された場合にはゲーム・・ミスコンダクト・ペナルティとしてその試合の残り時間、出場することができなくなります。

    上述のマイナーペナルティに比べて頻度が高くなく、「ミスコン」と総称されることで区別されています。

    マッチペナルティ

  • 退場時間:残り時間全て
  • 代替選手:5分後から可能
  • マッチペナルティを科された場合、その時点でマッチペナルティを科されたプレーヤーはその試合から退場となります。キャプテンの指名によってペナルティを科されたチームのプレーヤーが5分間ペナルティを遂行して、キルプレーを行うことになります。マッチペナルティを科されたプレーヤーは自動的に最低1試合の出場停止となります。

    例えば、故意に相手プレーヤーを傷つけた場合など悪質な反則行為よってはに同シーズン内、もしくは翌シーズンをまたいで複数の試合について出場停止となるケースがあります。

    試合中にペナルティが発生したら

    ここまで、ペナルティの種類や退場時間について解説しました。反則行為によって、ペナルティを科されたプレーヤーだけでなくチームや試合全体に大きな影響があります。そこでここからは初心者でも試合観戦中に反則行為があったかどうかすぐに判断できるよう、ペナルティが生じた場合の流れをお伝えします。

    審判が手を挙げる

    まずは、反則行為が行なわれた時点でレフェリー(*1)が手を挙げます。これは、どの反則のときでも同様です。

    反則行為があった時点から、反則行為をしたチームのプレーヤーがパックを触るまでは試合が中断されません。そのため、反則行為を行なわれた側は、反則行為の発生時点からパックをキープし続けてゴールキーパーを退場させ、パワープレーの状態とすることができます。(*2)少しでも長く人数的有利の状況で攻撃を行うために、ゴールキーパーは審判の手が上がった時点で味方の反則か相手の反則かを判断して、相手の反則であった場合には自陣ベンチまで走ることになります。ペナルティ発生によって6人攻撃を行ってゴールを奪えなかったケースでも、その後にペナルティの退場時間に応じてパワープレーを行うことができるため、キルプレーとなる側は反則行為と判断されてからすぐにパックを触ることが重要となります。

    (*1:ラインズマンと言われるオフサイド・アイシング・フェイスオフのみを行う審判も氷上に2人います。)
    (*2:プレーヤー6人対5人となります。反則行為をしたチームの誰かにパックを触られた時点で試合は中断されます。)

    パワープレーによってゴールがあった場合

    ペナルティは基本的に、規定時間ペナルティボックスにて遂行することになりますが、ペナルティを科されたチームがキルプレー中にゴールされてしまった場合には、ペナルティの残り時間に関わらずペナルティを科されたプレーヤーは試合に復帰することができます。これに伴って試合に出場する選手の人数は5人対5人に戻ります。

    パワープレーは、数的有利を利用した得点に繋がることが非常に多く、試合全体の流れ、さらに勝敗に直結してくるプレーです。反対にキルプレーとなることでピンチとなり、退場時間分はほとんど攻撃を行うことができなくなります。反則行為が氷上で発生することでベンチ内の雰囲気も変化することもあり、様々な影響がある、アイスホッケーの試合における重要なポイントとなっています。

    パワープレーやその他ルールについてきちんと理解してより楽しく観戦しましょう

    アイスホッケーのパワープレーに関するルールを解説しました。相手チームのペナルティによって生じ得るパワープレーは、人数差によって有利となり、試合の流れを大きく変えることが可能となります。一方で反則行為を行ってしまうとキルプレーを戦わなければならず、非常に不利になってしまいます。

    アイスホッケーの試合において重要な局面となるパワープレーに関するルールをきちんと理解して、より楽しく試合を観戦しましょう。

    • この記事を書いた人
    asukakawata

    川田

    首都圏出身、アイスホッケー歴15年です。FWからDFに転身後に10キロ増量し、選手引退後もなぜか体重が落ちません。 高校時代に全国2位、その後全日本選手権にて2度の優勝経験有り。海外に行ったり細々と生活しながら、週末の美味しい日本酒を楽しみに毎日頑張っています。 日本でのアイスホッケー人気を上げたいという思いから、初心者向けに自身の知識と経験を生かした情報を発信していきます。

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