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アイスホッケーのオフサイドとは?オフサイドラインとアイシングラインについて

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アイスホッケーのオフサイドルールとはどのようなものなのでしょうか。今回はアイスホッケーにおけるオフサイドと、アイシングという試合中に発生する頻度の高い2ルールを解説します。サッカーなどにもあるオフサイドルールは、攻撃に移る際の重要なルールですので、理解してさらに楽しいアイスホッケー観戦に役立てていきましょう。

オフサイドをしなかったアイスホッケープレーヤーの画像

アイスホッケーにおけるオフサイドとは?

アイスホッケーには、オフサイドルールとして、プレーが禁止される領域が規定されています。ここからは、サッカーなどのスポーツにもルールがあるオフサイドについて解説し、アイスホッケーのオフサイドについてもお教えします。基本的なルールになりますので理解しておきましょう。

そもそもオフサイドとは

オフサイドとは、フィールド内にてプレーを行うことができない領域のことで、試合中に試合の流れや相手プレーヤーの状況等に応じて異なります。例えば、サッカーにおいては攻撃側のプレーヤーが相手陣地側の相手ゴールと自身の間に相手プレーヤーが1人しかいない場合に、ボールより攻撃側にいた際にオフサイドとなります。

つまり、サッカーにおいてはディフェンス側ゴールから2番目に近いディフェンスプレーヤーがオフサイドラインとして機能することになります。

スケートリンク上のラインの意味合いとは

サッカーのオフサイドラインが、ゴールから見て2番目のディフェンスプレーヤーとなるのに対し、スピードの早いアイスホッケーではスケートリンク上に引かれたラインを基準に判断されることになります。そこでまずはスケートリンク上のラインやマークが持つ意味合いをお伝えします。

センターラインとフェイスオフスポット

スケートリンクには中央に赤い太いラインが引かれ、このラインのことを「センターライン」と言います。センターラインは、アイシングを判断する際に基準となるラインです。

このセンターラインの中央、スケートリンクの中央部は円が描かれ、この円のことを「フェイスオフスポット」と言います。フェイスオフスポットは、試合開始の際にフェイスオフが行なわれるところで、スケートリンクの中心以外にもアタッキングゾーン・ディフェンディングゾーンのそれぞれに2箇所設定されています。試合が中断される度にフェイスオフスポットにてパックが落とされて試合が再開されることになります。

ブルーライン

センターラインの両サイドには青いライン「ブルーライン」が引かれ、アイスホッケーではこのブルーラインがオフサイドの判断基準となります。

さらに、ブルーラインを基準として、自陣側を「ディフェンディングゾーン」、敵陣側を「アタッキングゾーン」と言います。ブルーライン2本の間、センターラインを含むスケートリンクの中心ゾーンは「ニュートラルゾーン」と言われます。

アイシングライン

ブルーラインを基準にアタッキングゾーンとディフェンディングゾーン内それぞれに各チームのゴールがあり、そのゴール上にもラインが引かれています。このラインを「アイシングライン」と言い、アイシングの判断基準とされます。アイシングラインは「ゴールライン」とも呼ばれ、ゴール裏のフェンスから4メートルの位置に引かれています。

アイスホッケーはゴールの後ろのスペースを使うことができる数少ないスポーツで、他のスポーツに比べてより面白みが増す理由のひとつとなっています。

アイスホッケーのオフサイドルール

オフサイドも反則行為のひとつとしてラインズマンによって判断され、オフサイドが取られると試合が中断されます。攻撃に移る際に取られる反則であるオフサイドは、良い方向に向かいかけた試合の流れを止める可能性が高く、スピードの早いアイスホッケーにおいては急に中断されることも少なくありません。そこでここからは、アイスホッケーにおけるオフサイドのルールを解説しますので、きちんと理解して試合観戦時に役立ててみましょう。

オフサイドラインを基準に判断

オフサイドは、アタッキングゾーン側のブルーラインを基準に判断されます。アイスホッケーにおけるオフサイドとは、パックよりも先にアタッキングゾーンに入ることで適用されることになります。(*1)

ブルーラインは、オフサイドライン以外にもアタッキングゾーン、ディフェンディングゾーンの区別のためにも活用されています。

(*1:攻撃側のプレーヤーのスケートがアタッキングゾーン内に着氷していない状態であればオフサイドとはなりません。スケートが空中にある場合はアタッキングゾーン内と判断されず、オフサイドも取られません。)

ペナルティとして試合が中断

オフサイドが発生すると、ラインズマンによってコール(*1)され、試合が中断されます。アタッキングゾーンのブルーラインを基準に判断されるオフサイドは、攻撃に移る際に取られることで試合の流れが変わる可能性があり、重要なポイントとなっています。

攻撃側にとってはオフサイドが大きな痛手となるため、オフサイドが取られないよう様々な対策が講じられています。例えば、スピードの早いアイスホッケーでは、ディフェンディングゾーンにて味方がパックを持った時点ですぐに攻撃に向かうためにFWがブルーライン付近の前線まで走り込んでパスを貰おうとする状況がよく見受けられます。この際に、すぐにディフェンディングゾーンからパックが出ず、走り込んだFWがブルーライン上をスケーティングしてパックの動きを待つことで、攻撃側プレーヤーはパックがアタッキングゾーン内に入った時点ですぐにパックに対して対応することができます。これは、パックがアタッキングゾーンに入った時点からオフサイドが取られなくなる点を利用して行なわれます。

また、パックの位置がブルーラインを超えるかどうか微妙な際には、空中であればブルーラインを超えていてもオフサイドが取られないことから、片足だけを持ち上げて、パックがアタッキングゾーン内に入った瞬間に足を踏み込んですぐに走り出すという戦術をとるケースもあります。

オフサイドが取られたあとは、オフサイドとなった状況に応じて異なるフェイスオフスポットにてフェイスオフが行なわれます。

(*1:笛が鳴らされ、合図されます。)

ディレイドオフサイド

オフサイドには、攻撃側プレーヤーがパックよりも先にアタッキングゾーンに入ったがパックに触れていない場合には、即座にコールされず、ブルーラインの端にいるラインズマンが手を上げた状態でオフサイドのシグナルがアピールされます。オフサイドのシグナルが出された後、攻撃側プレーヤーがアタッキングゾーン内のパックを取り返そうとしておらず、守備側に対してプレッシャーをかけていない場合には試合が続行されます。即座に試合が中断しないこのオフサイドのことを「ディレイドオフサイド」と言います。

ディレイドオフサイドでは、攻撃側プレーヤーがアタッキングゾーンから全員出る、もしくは守備側がディフェンディングゾーンからパックを出す(ブルーラインを超える)ことでオフサイドが取り消されます。このどちらかが行なわれた後に、攻撃側はパックに対してプレッシャーをかけることが可能になります。ディレイドオフサイドも基本的には通常のオフサイドと区別されずに「オフサイド」と呼ばれています。

オフサイド後のフェイスオフ

オフサイドが取られたあと、フェイスオフによって試合が再開されることになります。この際のフェイスオフは、オフサイドが取られた状況によって行なわれるスポット(*1)が異なります。例えば、攻撃側のパック保持者よりも先に攻撃側チームのプレーヤーがアタッキングゾーンに入ってしまった場合、ニュートラルゾーン内のオフサイドが取られた時点のパックの位置に最も近いフェイスオフスポットにてフェイスオフが行なわれ、試合が再開されます。

オフサイド後のフェイスオフによってディフェンディングゾーン側のチームにパックが渡る可能性が生じ、オフサイドがなければアタッキングゾーンにて攻撃を行えた場面を活かすことができなくなってしまいます。

(*1:フェイスオフスポットのことです。)

オフサイド以外の主要なペナルティ

アイスホッケーの試合中に遭遇する頻度の高いオフサイドは、理解しておくことで試合観戦時に非常に役立ちます。さらにここからは、オフサイドの他に試合中に発生頻度の高いアイシングという反則について簡単に解説します。

アイシング

2014年からアイシングルールが変更され、当時NHL(*1)にて採用されていたルールが適用されるようになりました。ちなみに、変更前に適用されていたタッチアイシングルールは、1937年からおよそ80年に渡って使用されていたルールです。

アイシングとは、センターラインを基準にディフェンディングゾーン側からアタッキングゾーン側へパックを放った際に、誰にも触れずにアタッキングゾーンのアイシングラインを超えた場合に試合が中断されるルールです。この基準自体はタッチアイシングでも現行のハイブリッドアイシングでも同じです。

従来のタッチアイシングでは、アイシングによって試合が中断された際には攻撃側・守備側両チームとも選手の交代が可能となっており、ディフェンディングゾーンでのプレーが長くなった場合に相手陣地側にパックを放ることで選手交代が行えるルールでした。基本的に、パックを放られたゾーン側のゴールキーパーがゴールクリーズ(*2)の外に出てパックを拾いに行った際にのみアイシングが取り消されていました。

(*1:アメリカの「National Hockey League」の略です。世界最高峰のアイスホッケーリーグです。)
(*2:ゴールの正面にある氷面の半円状のスペースのことです。)

ハイブリッドアイシング

2014年からは上述の「タッチ・アイシング」から現行の「ハイブリッド・アイシング」が適用されることとなりました。当時既にNHLでは採用されていたルールで、遅れて日本国内でも適用されました。従来の約80年続いたルールが変更され、新たに施行されたハイブリッド・アイシングとはどのような特徴があるのでしょうか。ここからはハイブリッドアイシングの特徴を3点ご紹介します。

アイシングによる選手交代が不可能に

従来の「タッチ・アイシング」では、上述のようにアイシングが取られて試合が中断した際は、攻撃側・守備側のどちらのチームであっても、誰でも選手交代をすることができました。そのため、ディフェンディングゾーンでのプレーの時間が長くなってきた際に、アイシングを取って選手交代を行うという戦術をとることができました。しかし、ハイブリッド・アイシングが適用されたことでアイシングを取られた側、ディフェンディングゾーンからパックを放った側の選手はアイシングによって試合が中断された際に、アイシングとなった時点で氷上にいた選手を交代することができなくなりました。

この規定は、守備側のプレーヤーとっては自力でパックをディフェンディングゾーンから出し、アタッキングゾーンに入れるか、もしくは味方ゴールキーパーがシュートを止めて試合を中断する等の何らかの形で試合が中断される以外は交代する方法がなく、ディフェンディングゾーンでのプレーが続く場合には非常に辛い戦いとなります。一方で攻撃側にとっては相手の疲労を活用して得点に繋げることが可能となり、大きなメリットとなりました。

パックの奪い合いが生じている場合

放られたパックに対して守備プレーヤーと攻撃プレーヤーがパックを触っていないが奪い合いとなっている、もしくは直後に奪い合いになることが予想される場合には、センターラインを基準にディフェンディングゾーン側から放られたパックがアイシングラインを超えた場合であっても、アイシングが取られません。

ハイブリッド・アイシングのこの特徴によって従来のタッチ・アイシングではアイシングとなっていたパックについても、アタッキングゾーンにて試合が続行されるため、ゴールに繋がる可能性が拡大しより攻撃的な試合が展開されるようになりました。一方で、競り合いによってアイシングが取られずゴールに繋がる可能性が潜んでいるため、パックを取るためにディフェンディングゾーンからアタッキングゾーンまで走り込むことで、近くのフェンスに対してスピード状態で到達することになり、怪我の危険性の向上も指摘されています。

逆サイドからパックが出てきた場合

センターラインを基準にディフェンディングゾーン側から放ったパックが、誰にも触れずに敵陣アタッキングゾーンまで到達し、さらにフェンスに当たったことでニュートラルゾーンまで返ってきたケースです。この場合には、ニュートラルゾーンにあるパックに対して誰が最初に触れるかどうかによってアイシングとされるかどうかが異なってきます。アタッキングゾーンから返って来たパックを、放った側のプレーヤーが先に触った場合にはそのまま試合は続行されますが、パックを放られた側が先であった場合にはアイシングが取られます。

従来のアイシングでは、アイシングラインを超えた時点で試合が中断されていましたが、ハイブリッドアイシングの適用によって新たな攻撃戦術も生まれています。これは、ディフェンディングゾーン側からあえて強いパックを放ることで、逆サイドにいる味方へフェンスを伝ってパスをすることが可能となり、スケートリンク中央を通す以外にもディフェンディングゾーンから攻撃に移る際のパスラインの選択肢が増えました。この戦術は、基本的に端へ端へ敵を追いやる守り方を行うディフェンス側を逆手にとった攻撃方法で、パックを放られたディフェンス側にとって急にサイドが反対になることで非常に守りにくくなるため、非常に有効な攻撃方法です。

アイスホッケーにおけるオフサイドを理解して観戦に役立てましょう。

アイスホッケーにおけるオフサイドルールを説明しました。また、アイシングについても簡単に解説しました。この2ルールはアイスホッケーの試合において発生する頻度が高い、基本的なルールです。試合観戦中の疑問点を少しでも減らして、アイスホッケー観戦をより楽しいものにしましょう。

  • この記事を書いた人
asukakawata

川田

首都圏出身、アイスホッケー歴15年です。FWからDFに転身後に10キロ増量し、選手引退後もなぜか体重が落ちません。 高校時代に全国2位、その後全日本選手権にて2度の優勝経験有り。海外に行ったり細々と生活しながら、週末の美味しい日本酒を楽しみに毎日頑張っています。 日本でのアイスホッケー人気を上げたいという思いから、初心者向けに自身の知識と経験を生かした情報を発信していきます。

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